コンサート

コンサート解説

巨匠ズービン・メータがブルックナーの交響曲第8番を指揮。今シーズン、ベルリン・フィル・デビュー50周年を迎えた彼ですが、この大作でも円熟の名演を聴かせてくれました。

他の同時代人と同様、交響曲第8番の初演(1892年12月)を体験したフーゴー・ヴォルフは、この作品に強い印象を受けました。彼は、「本作は、まさに巨匠の作品であり、その精神的大きさ、内容の豊かさ、偉大さにおいて、彼のどの交響曲にも勝っている」と記しています。その際ヴォルフが述べる「偉大さ」とは、様々な点に当てはまります。まず曲の長さは、これまでのブルックナーのあらゆる作品を上まわっています。同時にその内容は、比類のない感情的エネルギーを示すものです。それは例えば、第3楽章の各テーマが混ざり合い、疑念や哀悼、慰めを経た後で、圧倒的なクライマックスに到達する様子に表われています。

その際ブルックナーは、外部から様々なインスピレーションを得て、作品に織り込んでいます。例えば第1楽章は、ワーグナーの感情世界に依拠したもので、《ワルキューレ》第2幕の「死の告知の場面」や、《さまよえるオランダ人》のモノローグ(〈期限は切れた〉)から想を得ています。また第4楽章は、オーストリアとロシアの皇帝の会談という歴史的事件を土台としています。それは冒頭の弦の伴奏型に表われており、ブルックナーはこれを「コサックの連隊の行進」と呼んでいます(すべてブルックナー本人の弁)。作品は極めて多彩な顔を持ち、同時に計算し尽くされた断層も示していますが、全体は決して拡散することがありません。ブルックナーの強烈な個性が全体に整合性を与え、作品に高い強度を与えていると言えるでしょう。

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