ラトルの指揮、セラーズの演出でドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》を上演
サー・サイモン・ラトルがドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》をピーター・セラーズの演出で上演しました。フィルハーモニーの舞台にセットを加え、歌手たちには本格的な演技が付されています。主役を歌うのは、クリスティアン・ゲルハーヘルとマグダレーナ・コジェナー。嫉妬と猜疑心にさいなまれるゴローは、ジェラルド・フィンリーが演じています。彼らの演技は現代的心理劇といったところで、「愛の不条理」を鋭いタッチで描き出しています。
ドビュッシーのオペラ《ペレアスとメリザンド》は音楽史を塗り替えた作品と言われています。メーテルリンクの戯曲を元に、ペレアスとメリザンドの禁断の恋を描いたこの叙情劇は、1902年4月30日、パリのオペラ=コミック座で初演されました。この作品には伝統的な意味でのアリアも重唱もありません。初演のリハーサルの際、ドビュッシーは当初書いたオーケストラの間奏曲が舞台の転換のためには短過ぎることがわかると、現在見られる長さに曲を拡張しましたが、その間奏曲さえもが全体の中に有機的に組み込まれています。つまり、ここでの音楽の役割は、聴き手を場面から場面に導くことではなく、歌のテキストが表現しえない内容を明確にすること、なのです。ドビュッシーの念頭にあったのは、「言葉が表現力を失ったところから音楽が始まる表現形式」を作り出すことでした。
サー・サイモン・ラトルは2008年4月、ベルリン国立歌劇場へのデビュー公演で《ペレアスとメリザンド》を指揮していますが、今回満を持して手兵のベルリン・フィルとの公演に臨みました。セミ・ステージ形式の舞台の演出を担当するのは、ピーター・セラーズ。2015/16年シーズン、ベルリン・フィルのアーティスト・イン・レジデンスを務めるセラーズは、これまでバッハのマタイ受難曲(2010年)とヨハネ受難曲(2014年)の演出で大成功を収めています。マグダレーナ・コジェナーとクリスティアン・ゲルハーヘルがタイトルロール、さらにジェラルド・フィンリー(ゴロー)、ベルナルダ・フィンク(ジュネヴィエーヴ)、フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ(アルケル王)という強力な布陣による上演は、シーズンのハイライトの一つと呼べるものです。
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