コンサート

コンサート解説

「今の心境を、言葉で表現することはできません。幸せの絶頂から畏怖の念、不安まで、すべての感情が混ざっています。私はこのオーケストラにふさわしい首席指揮者となるために、全力を尽くしたいと思います。同時に、私に課せられる責任と期待の大きさも、強く意識しています」。2015年6月21日、キリル・ペトレンコがベルリン・フィルの次期首席指揮者に選ばれたとき、彼は自身の気持ちをこのように表現しました。今回の演奏会は、その後初めての登場となった時のものです。

ベルリン・フィルとはこれまでスクリャービン、バルトーク、エルガーなどのレパートリーで名演を聴かせてきたペトレンコですが、この公演ではモーツァルトの交響曲第35番《ハフナー》というウィーン古典派の王道の作品が選ばれました。これはザルツブルクの富豪ジークムント・ハフナーのために書かれた同名のセレナーデが元になった作品で、モーツァルトは両端楽章にフルートとクラリネットを加え、さらに行進曲とメヌエットの一つを削って交響曲へ編曲しました。特に燃え立つように華麗な第1楽章とめまぐるしく動き回るフィナーレは魅力的です。

アダムズの《ウンド・ドレッサー》に続いて演奏されるのが、チャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》。チャイコフスキーの死の目前に完成した交響的レクイエムとも呼べる作品です。第2楽章のメランコリックなワルツは、ロシア音楽の典型的な4分の5拍子で書かれていますが、彼は以前に作曲した6つの歌 op.57の第5曲でワルツと死という主題とを直接的に結びつけています。モーツァルトとチャイコフスキーは、とりわけ指揮者の解釈と音楽性が如実に出る作品ですが、ペトレンコはたいへん個性的で、独自の演奏を聴かせています。

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