コンサート解説
ロイヤル・コンセルトヘボウ管の首席指揮者を務めるダニエーレ・ガッティが客演しました。イタリア人ながらドイツのレパートリー、とりわけ重厚で深い響きの作品を得意とする彼は特異な存在と言えるでしょう。今年ガッティがベルリン・フィルに客演して20周年を迎える記念の公演に、2つの交響曲作品が選ばれました。
ブラームスの交響曲第2番は、1877年に休暇で訪れたヴェルター湖畔のペルチャッハで作曲されました。ブラームスは当時「この美しい地にはメロディーがたくさん飛び交っています。それを踏みつぶしてしまわないように注意しなければなりません」と語っています。1877年12月30日にウィーンで行われた初演は大成功を収めました。後の新ウィーン楽派へのつながりも指摘される作品だけに、ガッティがどのように指揮するかに注目が集まります。
当夜のもう一つのプログラム、ヒンデミットの交響曲《画家マティス》は、16世紀ドイツの画家マティアス・グリューネヴァルトの「イーゼンハイム祭壇画」が題材になっており、「天使の合奏」「埋葬」「聖アントニウスの誘惑」という標題の3つの楽章から構成されています。モダニズムの作風を持つヒンデミットは、当時ナチス政権にとって目の上のたんこぶといえる存在であり、この曲には当時の彼の生活状況を反映していると言われます。1934年3月12日にフルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルによって行われた初演は社会的な論争を引き起こし、その結果、ヒンデミットは1940年代末までドイツに背を向けることになるのでした。