コンサート

コンサート解説

2011年5月20日(金)、佐渡裕がベルリン・フィルにデビューを果たしました。この演奏会(全3回)の最終日が、デジタル・コンサートホールのアーカイブにアップされました。佐渡は小学校の卒業文集に「ベルリン・フィルの指揮者になりたい」と綴ったと言われますが、その夢がまさに現実になりました。当演奏会では、武満徹とショスタコーヴィチの作品を指揮しています。

佐渡はヨーロッパのオーケストラには頻繫に客演しており、ベルリンではこれまでベルリン・ドイツ交響楽団、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団を指揮してきました。この春には、バイエルン国立歌劇場管弦楽団、デュッセルドルフ交響楽団の演奏会にも出演しています。この時上演された武満徹の《フロム・ミー・フロウズ・ワット・ユー・コール・タイム》は、パーカッションのためのコンチェルトですが、その音楽はむしろ瞑想的で、打楽器の新しい魅力を垣間見せるものとなっています。武満の晩年に書かれ、彼の作曲家としての多彩な顔を証明する作品です。

一方ショスタコーヴィチの「交響曲第5番」は、彼の交響曲のなかでも最もポピュラーで、演奏効果の上がる作品として知られています。均整の取れた古典的な形式を持ち、明快さが特徴ですが、これはスターリンの粛清を受けたショスタコーヴィチが、ソ連体制が要求する「社会主義リアリズム」に近寄って作曲したため、と言われています。しかしそこには、ショスタコーヴィチの内面の苦悩が反映されているとも言えるでしょう。

【新聞評抄訳】

「彼が夢見たオーケストラでのデビュー演奏会は、大勝利となった。これは注目に値することだ。なぜならベルリン・フィルは、どのデビュー指揮者に対しても、これほど献身的に演奏するわけではないからある。ヴァイオリンの最前列には、コンサートマスターの樫本大進とダニエル・スタブラヴァが座っている。佐渡はレナード・バーンスタインのアシスタントだったが、彼がショスタコーヴィチの交響曲第5番の鋭角的なリズムを激しく振ると、その足はレニーばりに飛び上がる。しかしこの演奏で重要なのは、オーケストラと指揮者が細心の注意をもって作り出す響きの密度である。オペレッタのようなワルツの愉悦、最高のピチカート、息の長いラルゴ。これは、力強さと内容の濃さに溢れた見事な解釈である」

「(武満作品では、)ベルリン・フィルの5人の打楽器奏者が、チベットの旗の色の服を着て登場し、見事な技量を見せつけた。フィルハーモニーの天井にウィンド・チャイムが吊られ、5色のリボンを用いて演奏される。そして小さな主題が展開され、様々な色彩を生み出す。これは響き、音、ソロ・フルート、ロマンティック・サウンドの総合であり、誰もが親しめる瞑想の音楽、ワールド・ミュージックであった」

『ターゲスシュピーゲル』紙(初日評・5月22日付)
ジビル・マールケ

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