リスボンでのブーレーズ指揮ヨーロッパ・コンサート2003

2003年5月1日、ポルトガルの首都リスボンのジェロニモス修道院で行われたベルリン・フィルのヨーロッパ・コンサートを指揮したのは、ピエール・ブーレーズでした。彼は最先端の音楽のみならず、古典的モダニズムのスペシャリストとしても知られており、この日のプログラムには、ラヴェルやバルトークの作品と並んで、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番が演奏されました。モーツァルトで、繊細でニュアンス豊かな表現を聴かせたのは、ポルトガル出身の名ピアニスト、マリア・ジョアン・ピリス。冒頭のラヴェル《クープランの墓》では、ブーレーズがいかに透明な響きで音楽を構築できるかが鮮やかに示され、続くバルトーク《管弦楽のための協奏曲》でも、そうした音響の特徴が壮麗な会場の響きと相まって際立ちました。

2003年5月1日のヨーロッパ・コンサートは、ポルトガルの首都リスボンのジェロニモス修道院で行われました。16世紀に造られたこの修道院は大航海時代のポルトガルの栄華を今に伝える建築で、1987年にはユネスコの世界遺産に登録されています。

指揮者のピエール・ブーレーズは、1961年1月のデビュー以来、ベルリン・フィルとは定期的に共演を重ね、その解釈の透明さでよく知られています。彼の美質は、冒頭のラヴェル作曲の《クープランの墓》ですでに現れ、そこではオーケストレーションの細部まで明瞭に聴き取ることができるでしょう。アルブレヒト・マイヤーのオーボエ・ソロも聴きものです。続くモーツァルトのピアノ協奏曲第20番では、ポルトガル出身のピアニスト、マリア・ジョアン・ピリスが独奏を務め、少々意外な組み合わせながらもブーレーズと息の合った演奏を繰り広げています。

メインの演目は、バルトーク作曲の管弦楽のための協奏曲。1人1人のメンバーがソリスト級の腕を持つベルリン・フィルにとって、まさにうってつけの演目です。ブーレーズはこう語っています。「私は演奏中に時々、音楽家がより多くを表現しようとしているのを聴き取ります。そういうときは、その人に委ねます。ベルリン・フィルは強い個性を持つ集団ですし、それぞれが曲についてしっかりした考えも持っていますから、私はそれを受け入れるのです。その個性に抗うのは良くないですから」。熱狂的な拍手に応えて、ブーレーズ指揮ベルリン・フィルは、ドビュッシーの夜想曲から〈祭〉をアンコールに演奏します。音楽の祝祭にふさわしい締めくくりです。 

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ピエール・ブーレーズ
マリア・ジョアン・ピリス

© 2003 EuroArts Music International

ジャンル

アーティスト

ピエール・ブーレーズ 作曲、指揮
モーリス・ラヴェル 作曲
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト 作曲
マリア・ジョアン・ピリス ピアノ
ベラ・バルトーク 作曲
クロード・ドビュッシー 作曲

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