コンサート

コンサート解説

バルトークのヴァイオリン協奏曲第1番は、当時彼が思いを募らせていたヴァイオリニストのシュテフィ・ゲイエルのために書かれました。ヴァイオリンのソロによる冒頭の4つの音は、作曲家自身が「シュテフィの動機」と名付けています。トリスタン的ともいえる後期ロマン派を思わせる情熱と憧れに満ちた旋律は、やがて自由なフガートをもたらします。愛は成就されることがなかったのです。バルトークによれば、この作品が生まれたのは「半分の幸福だけだったとはいえ、まだ幸せな時期」でしたが、彼は自分へのアイロニーを含めることを忘れませんでした。というのも、第2楽章の冒頭で、カデンツァ風のヴァイオリン・ソロの最高音をワーグナーの「トリスタン和音」で妨げているからです。今回ソロを務めるヴィルデ・フラングは、ノルウェー出身の若手で、現在最も注目されているヴァイオリニストのひとりです。 

イヴァン・フィッシャー指揮による演奏会の後半の演目は、メンデルスゾーンの劇付随音楽《真夏の夜の夢》。フィッシャーは、ベルリン・フィル常連の指揮者のひとりですが、モーツァルトや初期ロマン派で意外なほど繊細な解釈を聴かせる存在です。今回披露するのは自ら編纂した《真夏の夜の夢》の組曲版で、ここにも彼の特別な愛情を認めることができます。1826年夏、若きメンデルスゾーンは《真夏の夜の夢》の演奏会用序曲を作曲し、その成熟ぶりにローベルト・シューマンをも驚かせました。後の1843年、プロイセン王のフリードリヒ・ヴィルヘルム4世からシェークスピアの戯曲の付随音楽を書くよう依頼を受けたメンデルスゾーンは、17年前に作曲した序曲をそのまま冒頭部分に流用したのでした。

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