ラトルがヤナーチェク《利口な女狐の物語》を指揮

ヤナーチェクに特別な愛情を抱くサー・サイモン・ラトルが、ピーター・セラーズの演出で《利口な女狐の物語》を指揮します。このオペラは、女狐が主人公になっていますが、実は彼女は、ある手の届かない女性の象徴となっています。森番の男は彼女に憧れ、魅了されているのですが、物語のなかでは、その女性と女狐が揺らぎながら同一視されます。女狐は、やがてある行商人に撃たれて死にますが、同時に憧れの女性もその男と結婚し、森番の男の手からは永遠に失われるのです。作品は森羅万象の生成の不思議や生の力、憧憬と儚いメランコリーに満ち、失われた愛を回顧するような胸に迫る調子を持っています。

晩年のレオシュ・ヤナーチェクが《利口な女狐の物語》の主題と出会うのは、彼の家政婦が当時ブルノの新聞に連載されていた絵物語をヤナーチェクに紹介したのがきっかけでした。その頃ヤナーチェクはオペラ《カーチャ・カバノヴァ》の作曲の最中でしたが、ルドルフ・ティエスノフリーデクの原作とスラニスラフ・ロレクの愛らしいイラストに音楽を付け、オペラ化することを即座に決めたのでした。

第1幕では、門番に捕えられた子供の女狐ビストロウシュカが、動物だけでなく、人間の人生を学ぶ機会を得ます。そこから逃亡した女狐は、第2幕で森の動物たちの間で毅然と振るまい、雄狐と恋に落ちます。女狐は子宝にも恵まれますが、最終幕では行商人の銃弾に倒れてしまいます。しかし、翌春、森番は森を歩いているときに「母親の面影のある」女狐の子供に出会い、死と再生を繰り返す自然の輪を実感させながら感動的に幕を閉じるのです。

サイモン・ラトルにとってこの《利口な女狐の物語》は、1977年にグラインドボーン音楽祭に最年少でデビューした際に指揮するなど、彼のキャリアを決定付けた重要なオペラと言えます。今回の上演は、バッハのマタイ受難曲を始めとして、これまでベルリンでいくつもの話題作を届けてきたピーター・セラーズの演出。2013年にエコー賞を受賞したヴォカール・コンソート・ベルリンの合唱、さらに選りすぐりの歌手陣との共演によりお聴きください。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
サー・サイモン・ラトル
ジェラルド・フィンリー
アンゲラ・デノケ
ルーシー・クロウ
ピーター・セラーズ

© 2017 Berlin Phil Media GmbH

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アーティスト

サー・サイモン・ラトル 首席指揮者 (在任期間 2002-2018)
レオシュ・ヤナーチェク 作曲
ジェラルド・フィンリー バスバリトン
ハンノ・ミューラー=ブラッハマン バリトン
アンゲラ・デノケ ソプラノ
ルーシー・クロウ ソプラノ
サー・ウィラード・ホワイト バス
アンナ・ラプコウスカヤ メゾソプラノ
ピーター・セラーズ 演出

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